カーフレイズは、3秒で降ろす。跳ぶ足・着地する足の作り方

大人からのバレエ

「プリエは深くなってきたのに、ジャンプが重い」「着地のたびにドンと音が鳴る」「アレグロの途中でふくらはぎがつりそうになる」。

大人の生徒さんから、この系統の相談をよく受けます。

先に結論を書きます。ジャンプの悩みの多くは、跳ぶ力ではなく「降りる力」の不足です。

そして降りる力は、カーフレイズという地味な種目で作れます。

ただし条件がひとつだけ。上げることより、降ろすことに時間をかける。目安は、3秒です。

僕は東京バレエ団で踊りながら、Y’s Balletという大人向けのバレエクラスを東京で開いています。

2026年4月に左足首の靭帯を痛めて、いまジャンプをゼロから積み直している途中でもあります。

この記事では、なぜ「3秒で降ろす」のか、僕自身が「降りる側」をどう作り直しているのかを書きます。

前回の「レッスンだけでは、届かない。」で、大人バレエに必要な3つの土台——股関節・体幹・足部——の全体地図を書きました。

今日はその1本目、足部の話です。


ジャンプの悩みは、だいたい「降りる側」に正体がある

ジャンプにはふたつの仕事があります。

床を蹴って跳ぶ仕事と、降りてきた身体の衝撃を受け止める仕事。

主役はどちらも同じで、ふくらはぎの筋肉と、そこから続くアキレス腱です。

アキレス腱は、人体でいちばん太くて強い腱です。

つま先を伸ばして床を押す力の約9割は、この腱まわりが担っていると言われています。

跳ぶときは、プリエ(膝を曲げて沈む動作)の位置から股関節→膝→足首の順に伸ばしていき、最後のひと押しをアキレス腱の反発が担当します。

ゴムが伸びて縮む反動と同じで、腱がバネとして働くと、筋力で頑張るより高く、軽く跳べます。

一方、降りるとき。ふくらはぎの筋肉は、引き伸ばされながらブレーキをかけて、衝撃を吸収します

「伸びながら力を出す」使い方です。

着地でドンと音が鳴る人は、このブレーキが弱くて、吸収しきれなかった衝撃が膝や足首、腰に流れている状態です。

ふくらはぎがすぐつる人も、跳ぶ側と降りる側の両方の仕事量に、筋肉の容量が追いついていないサインのことが多いです。

  • 跳ぶ=ふくらはぎとアキレス腱が、バネになって押し出す
  • 降りる=ふくらはぎが伸びながら、ブレーキになって衝撃を吸収する

レッスンでは「もっと高く」「音を立てないで」と注意されます。

ただ、吸収する筋力そのものは、アレグロの流れの中では育ちにくい。

レッスンは力の使い方を教えてくれる場で、力そのものは前提として要求される——前回書いた構図の、いちばん分かりやすい例がこの着地です。


カーフレイズは「上げる運動」ではなく「降ろす運動」

そこで、カーフレイズです。踵を上げ下げするだけの、あの地味な種目です。

やり方はシンプルですが、ポイントは全部「降ろし方」にあります。

  1. 壁や椅子に軽く手を添えて、両足を腰幅に開いて立つ
  2. 母趾球(親指の付け根)で床を押しながら、ルルヴェ(つま先立ち)の最高点まで踵を上げる
  3. 上げきったら、3秒かけてゆっくり踵を降ろす
  4. 体重が小指側に倒れない、親指だけで押しすぎない。足裏の真ん中で押す

目安は両脚20回×3セット、週2〜3回。フォームが安定したら、片脚12回×3セットに進みます。

カーフレイズ|3秒で降ろす(基本)。降ろすところを見てください

小さいボールを挟むと、脚がそろう

もうひとつ、僕がよくやる形を紹介します。足首の内側に、小さいボール(クッションでも代用できます)を挟んでカーフレイズをする方法です。

さっき「小指側に倒れない」と書きました。

踵を上げていくと、足が外へ逃げてしまう人がとても多いです。

バレエでいう鎌足の形で、この癖のまま上げ下げを繰り返しても、狙った場所に効かないうえ、足首をひねる方向に負担がかかります。

ボールを挟むと、これが自分で分かります。

落とさないように挟み続けるには、内ももを使って両脚を寄せ続けるしかないからです。

結果として、両脚が真ん中に集まったまま踵が上がる。

5番ポジションで立つときや、アンドゥオール(脚を外に開く動き)を保ったままルルヴェするときと、同じ筋肉の使い方になります。

やり方は通常版と同じで、挟むものが増えるだけです。

3秒で降ろすのも変わりません。ボールが落ちる、または途中で挟む力が抜ける場合は、そこが今の限界です。

回数を減らして、挟み続けられる範囲でやってください。

カーフレイズ|内くるぶしにボールを挟む版

なぜ3秒か。パッと降ろすと、さっき書いた「伸びながらブレーキをかける」仕事を、ふくらはぎがしないで済んでしまうからです。

ゆっくり降ろす3秒のあいだ、ふくらはぎは着地とまったく同じ使い方をしています。

つまりカーフレイズの本体は、上げる往路ではなく降ろす復路

踵の上げ下げの回数だけ数えて、ストンと降ろしていたら、もったいないです。

もうひとつ、知っておくと得する仕組みがあります。

ふくらはぎは、膝を伸ばして踵を上げると表側の大きな筋肉(腓腹筋)が、膝を軽く曲げたまま上げると奥の筋肉(ヒラメ筋)が働きます。

表側はルルヴェの高さの担当、奥は保ち続ける持久力の担当。膝を伸ばした通常版に、膝を軽く曲げた版(15回×3セット、週2目安)も足すと、ふくらはぎ全体が育ちます。

それから、強さと同じだけ大事なのが硬さです。

ふくらはぎが硬いと深いプリエができず、着地の吸収が浅くなって、余計にふくらはぎだけで頑張ることになります。

跳んだ日は、壁に手をついて踵を下げるふくらはぎのストレッチを左右30秒×2、必ずセットにしてください。痛みではなく「伸び」を感じる強さで。


僕が「降りる側」を作り直している順番

ここからは個人の体験談です。同じことをすれば誰でも同じ経過になるわけではないので、あくまで一例として読んでください。

2026年4月22日、僕は左足首の外側の靭帯を痛めました。

経過は連載「足首靭帯損傷」に全部書いていますが、振り返ると、復帰の道のりはそのまま「降りる側の作り直し」でした。

最初にやったのは、ジャンプでもルルヴェでもなく足裏でした。

受傷18日目に、足指で床をつかむ足裏トレーニングを開始。

28日目には各100回まで増やしました。足裏は着地のいちばん下の土台で、ここの感覚が戻らないと、その上のふくらはぎも働きようがありません。

翌29日目に、ルルヴェが戻ってきました

33日目、リハーサルで試しに軽くジャンプを跳んでみました。

結果は、シャンジマン——両足で跳んで両足で降りる、いちばん優しいジャンプ——なら可能。

踏み込むジャンプは痛くて不可。当日の記録には、こう書いています。

軽いシャンジマンくらいなら出来るけど、ちゃんと踏み込んでのジャンプは痛くてダメでした。んーちゃんと踊れないのはもどかしいですね(Day 33の記録)

もどかしくても、跳ぶ量を増やすことでは解決しませんでした。

39日目の怪我後初舞台は、ジャンプと左足軸の動きを避けて、振りを変えてもらって完走。正直に書くと、復帰はまだ途中です。

回転もセンターレッスンも戻しきれていないし、腫れも残っています。

その中で、いま僕がジャンプを積み直している順番がこれです。

片脚でまっすぐ立つ→カーフレイズで降ろす力を作る→両足の小さいジャンプ

跳ぶ練習より先に、降りる準備。

着地で足首が崩れる怖さは、降ろす練習を積んだ分だけ減っていきました。僕の場合は、ですが。

いま怪我をしている方は、必ず医師の指示を優先してください。


家でやるなら、この順番で3つ

まとめます。跳ぶ足・着地する足は、この順番で作ります。

  1. 足裏トレーニング——足指で床をつかむ・手繰る。着地の位置感覚の土台
  2. カーフレイズ——3秒で降ろす。両脚20回×3セットから、安定したら片脚へ
  3. シャンジマン——両足で小さく跳び、音を立てずに深いプリエで降りる。8回×2〜3セット、週2まで

③に進むときの約束ごとです。捻挫をしたことがある方は、①②を飛ばしていきなり跳ばないこと。床が硬い場所では跳ばないこと。

静かに降りられないうちは、回数も高さも増やさないこと。

高く跳べることより、降りる音が小さくなることが先です。

跳んだ日は、ふくらはぎのストレッチも忘れずに。

鋭い痛み・腫れ・熱感が出たら中止してください。痛みが続く場合や、すでに足首・アキレス腱に痛みがある方は、始める前に医療機関で相談を。


着地が静かになると、踊りは長く続けられる

ジャンプの高さは、正直、すぐには変わりません。

でも着地の音は、降ろす練習をした分だけ変わっていきます。

音が静かになるということは、衝撃を筋肉で受け止められているということ。

膝や腰を守りながら、長くバレエを続けるための土台です。

「頑張っているのに、跳ぶのが怖い」「着地の音を注意されるけど、直し方が分からない」。わかります。

そういう方は、頑張る場所を、足首の「降ろす側」に変えてみてください。

自分の足がいまどの段階か知りたい方には、8つの質問で足りない土台とメニューが出てくる大人バレエの土台診断も作ったので、試してみてください。

簡単なエクササイズが出てくるようになっています。

東京近郊の方は、Y’s Balletのトレーニングクラスもあります。

踊るための土台を作る内容を、初級の方から参加できる形で毎回組んでいます。

合わなければ来なくていいので、お試しからで大丈夫です。

2027年1月30日にはY’s Balletのスタジオパフォーマンスも決まっているので(申込は2026年7月31日まで)、作った足で立つ舞台まで、目標を繋げられます。

お試し参加OK・合わなければ来なくて大丈夫です

カーフレイズは地味です。踵を上げて、3秒で降ろす。

それだけです。でも、やらないと変わらない。

3秒で降ろせる足は、静かに降りられる足。次のジャンプは、その足で跳べます。


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トレーニングの内容や身体の変化には個人差があります。身体の痛みや怪我については、必ず医療機関にご相談ください。

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